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 7月28日(土)テレビやラジオでもご活躍で、本校の卒業生でもいらっしゃる三遊亭楽生師匠を本校にお迎えし、人にモノを伝えるときのコツなどについて、じっくりお話しいただきました。
 「日本人はスピーチが下手だ」とのっけから言われ、だれも反論できません。では、どうすれば師匠のように話が上手になるのでしょう、とわれわれ聴衆はそのコツをどうしても知りたくなります。そこへ、師匠は具体的な方法をたっぷり話してくださいました。
 なかでも気をつけてほしいこととして、「粗言(あのう、そのうなどの無駄な言葉)」「片言」「重複」「小声」という四つのキーワードを挙げられました。これらをできるだけ減らすよう努力すれば、格段に話が聴きやすくなるそうです。また、一本調子にならぬよう「抑揚」「テンポ」「キーの高さ」などについても注意することを、具体例を交えて説明してくださいました。その中で、「明るく元気に努めようとせずとも、高いキーで話せばそのように聞こえる」ということをおっしゃっていて、これには目から鱗でした。ちなみに、「ラ」のキーが人間の耳に最も訴えるらしいです。
 それで、自分の話し方を見直す方法としては、ICレコーダーで自分の声を録音するのがもっとも良いそうです。客観的に自分の声と対峙することで、自分がいかに無駄な話をしているか、そこで気づくのだそうです。すぐに直るものではなく、2,3年はかかるということですが、今日より明日、明日よりあさってというように努力すれば、いつか必ず次のステージへ行けますよ、と力強くおっしゃいました。
 お話は他にも、「言いたいことは最初に持ってくるのではなく、入り口を別に用意しておいて、そこから最終的に言いたいことに話を持っていく」とか、「話を記憶するには、歩きながら覚えるのがいい。五感が刺激されるから、身につきやすいのだ」とか、「外国人に上手に話を伝えるには、シンプルに、そして絵を想像させるような話し方をすればいい」といったハッとさせられるような金言がたくさん聞けました。楽生師匠の巧みな話術でこのようなお話をされたので、非常に説得力を持って聴衆の耳に届いただろうと思われます。もちろん、レクチャーの間は始終笑いが絶えませんでした。
 最後に本業の落語を一席ご披露くださいました。「厩火事(うまやかじ)」というお話で、孔子なんかが出てきました。話を聴きながら、スピーチと落語とは共通するところもあるでしょうが、落語となるとまた別の難しさがあるのではないかと思いました。前のめりになって聴いている方などもいて、最後の下げまであっという間の30分でした。
 余談ですが、将来、師匠が円楽襲名を遂げられたあかつきには、日中学院の皆さんを帝国ホテルのパーティーに呼んでくださると、確かにおっしゃいましたことを、最後にここに記しておきます。

楽生
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